進路指導 永谷雅仁先生インタビュー



──本日は、お時間をいただき、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

永谷先生(以下、永谷):よろしくお願いいたします。

──早速ですが、(2019年)3月に卒業した116期生について、例年と比較して、学生のタイプや志望校の変化等、何かお気づきになる点はありましたか。

永谷:とにかく一生懸命、学校に残ってやっていました。理系が強かったという印象です。

──理系は人数的にも多いですか?

永谷:人数的にはそんなに変わりません。大体半々です。

──理系が強いと思われる理由ってありますか?

永谷:もともと本校は理系が強いですが、本当に理系が強い年でないと今回のような成果にはなりません。国公立に現役で64名行っています。卒業生194名に対して64名です。もちろん、進学は別の私立に行った生徒もいます。

──高校1年生から2年生に上がるときに、選択科目によって理系か文系に分かれるのですか?

永谷:2年生に上がるときに緩やかに分かれます。最終的には3年生です。高1から高2に上がるときに、物理か化学か歴史を選択します。

──そのまま自分が選んだ理系か文系かのコースで大学は受験されるのですか?

永谷:文系を選択した子たちが理系に変わるのは、カリキュラム上ちょっと難しいと思います。一部理系から文系に転向する生徒はいますが、毎年数名です。

 

──例えば、絶対行きたいとの理由で早稲田を全部受ける子とか、そんな生徒さんはいませんでしたか。

永谷:昔はいたかもしれませんが、今はいません。そもそも、受験科目に根本的なところで違いがあります。本当に国公立系で空きなく全部できる生徒がいたとすればあり得ますが。英数理でも英数国でもいけると。

 

──今の受験傾向としては、皆さん学校別というより目的別でしょうか?

永谷:実際見ていて、早稲田の一部の学部は受けようとか、ちゃんと分けて受けていると思います。

──学校またいで、ってことですよね。

永谷:学校絞って、またいで受けて、他は受けずに早稲田だけ、というパターンよりは変わってきていると思います。

──受験科目の変化とか、感じられるところはありますか。受験科目で、これまで数学と社会は取り替えられなかったけど、例えば、数学は段々傾向として取り入れる学校が多くなっているとか・・・

永谷:元々、経済系の学部はどちらでもOKです。

──特に大きな変化とか感じられるところはないですか。

永谷:そんなには感じないですが、社会は、絞られてきています。日本史、世界史だけになり、地理や政経は選択できなくなっているところが多くなっています。

──今、地理、政経はなくなったのですか?

永谷:なくなってはいませんが減っています。

──そもそも選択ができないということですか?

永谷:私大の入試においては、傾向として日本史、世界史が主流です。センター試験では歴史が第1科目で地理、公民は2科目目という位置づけです。理系のセンターは別です。理系の生徒はそちらを受けます。

──私が受験生のころは、日本史もしくは世界史をやっておけば、どこの大学でも受けられるというイメージでした。地理や政経が選択できない学校が結構あったと思います。日本史や世界史は結構覚えることが多いから大変ですが、日本史や世界史を選んでおかないと受験校の選択が狭まってしまうと感じていました。

 

 

──私が愛知県出身だから思ったのかもしれませんが、両国生は関東の学校を進学希望先として選ぶ傾向ってありますか?

永谷:あまり西には行きません。北海道、東北へは行きますが、関西へはあまり行きません。

──やっぱり関東傾向で・・・

永谷:旧帝大でも、名古屋はポツポツとはいますが、大阪はほとんどいません。

──何かイメージとして、関東の学校にみんな行くという感じがしたので、やっぱり関東の方は関東の学校に行くのでしょうか。

永谷:それは傾向的に強いです。どうしても親元を離れたくないということでしょうか。九州へはほとんど行きません。宮崎に行っている生徒が1人、今大学2年生です(2019年4月時点)。琉球はかなり行っています。

──千葉大が多いって印象がありますね。

永谷:昔は両国といえば千葉でした。旧第六学区だったので、8クラス時代の時には、合格者が1クラス分くらいいたことがあります。

──そうですか。

永谷:当時はクラス数も違います。学部をよく見ていくと、医学部もいます。基本的には千葉は、もう少し合格者が出ていてもおかしくないですが、千葉にとらわれなくてもと思います。それから、中高一貫になって変わったことは・・・

──そこ、聞きたいです。

永谷:例えば東大。今は駄目でも受けます。昔の両国高校時代は、絶対受かる子しか東大を受けませんでした、合格率は、ほぼ100%(笑)

──チャレンジしないのですか。

永谷:そうです。中高一貫になってからでも、チャレンジしないで、その次の大学だったら私立でいいという生徒もいます。

──そうですか。

永谷:あくまで国立、第1志望校で社会科学系だったら、東大の次は、一橋があります。人文科学系だったら、少しランクが下がります。理系なら東工がありますが、人文科学系だと、東大駄目だったら、早慶でいいじゃないって発想になるんです。だからそういった意味で、あえて国公立を受ける、というのはありです。

 

 

──中入生と高入生だと、傾向といいますか、志願先とか、何か違いを感じられることはありますか。

永谷:やはり中学から入る生徒は、高校受験の経験をしていないので、面接指導や卒業研究等色んなことを中学でやっていますが、そういった意味でメンタルの弱さみたいなものはあります。高校から入ってくる生徒たちも、先ほど開催した進学講演会の委員会でも話題になりましたが、中学から入った生徒たちは高校受験をした高入生ってすごいと感じているし、高校から入った生徒たちは中入生ってかなり頭いいのではと感じています。何しろあの倍率ですから。

──では、お互いリスペクトしている感じですか。

永谷:そんな感じです。親御さんは、お子さん以上にますますそんなところがあるかも知れませんが。

──実際に勉強一緒にやってみると、子供のタイプとしてはそんなに違いはないのですか。

永谷:タイプとしてはやはり受験で入ってきた高校入学生の方が傾向としては、地道にコツコツやると感じています。

──ちょっと危機感が高い?

永谷:今のところ、そういう風にはとらえないですが、やはりコツコツやっていかないとついて行けないというところはあるかも知れません。

──そういう緊張感みたいなのあるんですね。

永谷:もちろん中入生の真面目なタイプの子たちも、実はビクビクしていて、こんなに違うのかと、慌てるわけです。同じ学校にいても、やはり授業が違うので、わざわざ中3になったら、高校生の授業見学に行きます。

──高入生は、ものすごく緊張して高校受験して合格しても、またすぐ大学受験があるというのを思いながら入ってくるので、中入生に比べると、進学先について具体的な像を持っているとかそういう違いを感じられることはありませんか?

永谷:中入生にも色んな情報を得る機会を、先輩たちを呼んできてやっています。

 

──中入生に対する対策で先生が具体的にされていることはありますか

永谷:一つは、中だるみというものをなくす為に、中学から高校に入るところをしっかりと意識をさせています。面接指導の中ではどれだけ両国高校に附属にいるから来るのではなくて、どうして両国高校を目指すのかということを考えさせることが必要という面接指導をしています。推薦入試を受けた子たちが受けるような面接指導をやります。短いですが、準備などで彼らは相当時間を掛けるので、実際やってみると、かなり緊張してるじゃないかということで、結構それは刺激になっていると思います。

──親が思うほど学力にそんなに差はない感じですかね、高入生と中入生は。

永谷:トータルではないと思います。ただ、中学は色んなことを勉強してますよね。そもそも元が高校ですから、理科なんて第1分野、第2分野という言葉を中入生知らなくても、物理、化学、生物、地学なんて普通に言ってますよね。

──普通そうですね。

永谷:その専門の先生がやっています。少なくても教科書に載っている実験というのは、ひと通り全部やっています。普通、中学だとそうはいきません。実は専門は化学だけど物理を教えているとか。

──ああ、います、います。

永谷:でも、やらないといけないですよね。そうすると、社会で言えば、歴史は歴史の教員が教えています。地理は地理の教員が出ています。普通の中学校だとそうはいきません。

──いかないですね。

永谷:歴史の人が地理もみたいになっている。全部は無理ですが、極力、専門性化してやっているので、相当なことができます。理科ではTT(ティーム・ティーチング)もやっていますから、かなりの内容のことができるわけです。

 

 

──進路指導をするにあたり、心掛けていること、思うところがあれば教えてください。

永谷:最後まで諦めないということと、一番大切なのは偏差値ではなくて、生徒が何をやりたいか、第1志望は何なのか、その第1志望を後押し、進路指導をやっているのが両国高校という学校です。そこに、第1志望のところに行かせてあげるというのが、進路指導なのかなと思います。一応、第1志望を決めるにあたって、色んなものを投げかけて、これもできるよって言うことがある。ちなみに、今年東大合格した子の一人は、最初から東大志望じゃありませんでした。担任なども、「行けるんじゃない?」と言って、とにかく高3の最初の模試で、最初に書いた志望校の判定がA判定だったので、志望校上げて・・・そういう生徒もいます。無理矢理、君はできるから東大にってことはせず、最後の最後まで、色んなことはありますが、大切なのは、この生徒の第1志望は何なのか、ということです。

──高3になってから東大を目指し、合格したんですか。すごい、元々きっと優秀ですよね。

永谷:元々優秀であったとしても、それだけで、そこまで力を発揮できたかというと違うと思います。学校に残りながら、仲間たちと一緒に勉強しながら、得意なところを教え合ったりして・・・。その生徒は理科はできたと担任は言っていましたが、数学とかはそんなではありませんでした。やはり、数学が得意な生徒がいたり、色んな生徒たちがいて教え合って勉強していました。

 

──お友達同士で?

永谷:もちろん、先生にも聞くでしょうが、やはり、友達同士で教えることは、インプットしたものがアウトプットされることによって、自分の理解が深まっていく。そういう意味で、チーム両国という言葉をよくお聞きになると思いますが、私たちもチームですし、保護者の皆さんもチームで、その中でまだ生徒たちの中だけで同じ第1志望の生徒たちが一緒になって教え合ったり、高め合ったり、時には一緒に運動したり、お菓子を食べたりしながら一緒に勉強しているとか。

──いい雰囲気ですね。両国附属中学と高校、高入生がなくなった時に、学校として何か大きく変わる点とかありますか?先取学習ができるとか。

永谷:誤解して欲しくありませんが、発展的な学習はかなりやっています。先取をしないというのは、高校から入ってくる生徒もいるし、基礎基本を定着させようということもあって、高校でやることは必ず高校でやります。仮に中学でやってしまっていても、高校でやります。発展的な学習はするけれども、先取はしていない。実は先取りをしないということについては、附属中がスタートした時から決めていたことで、その時の校長でもありました。やっぱり、基礎基本をしっかりと、中学でやるべきことは中学でしっかりやる、繰り返してやる、ということは方針だったので、それを基にしていくのが、私の変わらない信念です。逆に、私立の中高一貫さんがやっておられるような、どんどん先取をしていくことは、両国に来る生徒たちには合わないと思います。もちろん、一部の子は対応すると思いますが、高校課程が全部終わっちゃって、あとは受験のことばかりやる。両国はそういう学校ではないと思います。ただ、少しは最後の期間を受験に特化した期間にはできるかなとは思いますが。基本的にはあまり先取をやり過ぎたら、両国は両国でなくなるんじゃないかと思っています。

 

 

──授業はプリント多いですよね。だから、プリントの収納能力がないと厳しいのではないかと?

永谷:そうですね。整理する力がないと、きついかも知れません。整理に関しては、中学で覚えてくれればいいと思います。

──はい。でも、授業参観で見ていると、ファイルしている瞬間から、どんどん授業が進んでしまうので・・・

永谷:はい。

──・・・あの能力がないと、なかなか授業について行くのが難しいと思いました。授業のスピード自体は、早いですよね。先生の体感としてどうですか。私はすごいって思ったのですが、子供もよくついていけるなと思って・・・。

永谷:全部の生徒がついて行けるかというと、ついて行ける生徒は限られていると思います。高校はそこまで考えられないぞというところがあって・・・。

──もっと早まりますか?

永谷:早いです。中学のテンポはいいなと思うけれども、そんなに走ってるという感じではありません。

──子供たちが、【ちゃんと座っている】というよりも、【参加してる】という感じで、ずっと先生を目で追っていたのですごいな、と思いました。テンポの良さと先生のスピード感が。英語もひたすら、バンバン進みますよね。あの授業に、子供達は完璧に集中して参加してないと置いて行かれちゃうって感じで・・・

永谷:でも、子供たちは、ああいう授業は好きみたいですね。

──みんな、先生を目で追ってるというか、みんなが先生を標的にしていて(笑)

永谷:逆に、私たちの社会の様な授業は苦手になっているかもしれません。

──・・・(笑)

  

 

永谷:じっと聞くのは、苦痛かもしれないですね。それぐらい、あのテンポの授業は子供たちの身体には合っているのかも知れません。だから、特に英語に関しては嫌いになる生徒はいないと思います。

──両国生の英語力、どの様にご覧になっていますか。

永谷:卒業生は、英語は両国だから大丈夫だと言っています。

──先生の体感的でいいのですが、受験対策で英会話スクールや予備校等に通っている生徒が多いように感じられますか?

永谷:普通の予備校は行っている人がいます。都立としては予備校に通っている生徒は少ない方だと思います。行っている生徒は最近は増えて3、4割ぐらい行っていると思います。

──3、4割?

永谷:3、4割が、塾に軸足を置いているかと言ったら違っています。自習室を使う為とか、夜遅くまでそこで勉強できる為とか、もちろん、一部、私大文系の中には塾に相当傾倒している生徒もなくはないですが、トータルとして見た時に、利用者の全部が学校に背を向けているかと言うと、そうではなく、学校のことはしっかりやっています。難関校に行っている生徒程、塾、予備校の利用率は少ないです。

──両国中高を目指す小中学生に熱いメッセージをお願いします。

永谷:夢に向かって地道にコツコツできる生徒に来てもらいたい。多様性を認める学校なので、極論すれば、勉強ばっかりしてる生徒が排除されたりすることがない学校です。それから、ちょっと変わっているなと思われる生徒の居場所がある学校だと思います。

──わかります。何となく。

永谷:生徒達は優しいです。ちょっと違っていても、と思いながら、受け入れているところがあると思います。色んな生徒が暮らしていける、生きていける学校を目指して、そこを踏まえた上で、夢に向かって地道にコツコツできる生徒にたくさん入ってほしいと思います。一応、天才も入ってきてもいいんです。それは認めますが、それよりも何か両国のタイプとしては、コツコツやる生徒向きの、そういう学校だと思います。熱くなりましたでしょうか(笑)。

──はい(笑)。

 

 

──昨年度の受験に関して、何か印象に残ったエピソードはありますか。

永谷:生物室で運動している生徒がいたり、片や教室でカードゲームやっている生徒がいました。あくまでも息抜きでやるのですが、やはりチーム作って勉強をやっていって、それぞれから東大合格者が出たとか、何か、とにかく色んなところで、色んな生徒たちが、勉強だけじゃなくて、色んなことを一緒にやりながら、刺激し合いながら、何か頑張っていったというのがあると。──高校生からはスマートフォンとか持ち込み許可出ますけども、高校生になってスマホはスマホ、受験は受験という具合に、うまく使い分けができるものですか。

永谷:使い分けができる子は成功すると思います(笑)

──なるほど(一同納得)。

永谷:問題もあります。登校して生徒指導を受けるとか。中学のスマートフォン禁止と言うのは、部活などで他所に行った時とか、色んなトラブルもあって。ごく稀な場合だけ顧問の許可で、移動の為に持たせるケースはあります。ただ、実際にはスマートフォンもないと、今は受験もできない。出願の時点からそうですし、合格発表もです。色んな情報も得ることができますし、スマートフォンから入力するものもあるので、全く使わないというのは難しいと思います。

──スマホはずっと、先生が預かったりもせず、ずっと皆さん持って・・・

永谷:高校生は持っていますよ。ただ、当たり前ですが、授業中は使ってはいけないです。

──自制心に任せる・・・

永谷:もう、それによりますよね。ただ、元号変わった時は、特別に私も許可しました。官房長官のように、「令和」と筆で書いた紙をカードケースに挟んで、撮っていいよって。

──ええっ!(笑)

 

永谷:だから、逆に調べさせる時、普通は電子辞書ですが、ちょっと悪いけどこれ、どうしても時事的な問題なので誰かスマホを出してと言って、代表に調べておいてってとかはあります。

──なるほど。そういう使い方をしているのですね。

永谷:本当に緊急で、今ちょっとそれ見たいといった時、やることはあります。あくまでも、許可をしてです。勝手にそれはやってはいけないですし。試験中に身に着けてたら、それはカンニング行為とみなすこととしています。

──今日の業者テストっていうのは、ベネッセでやるのですか(インタビュー当日‐7月6日‐は高校模試実施日)。

永谷:今日はベネッセです。進研模試総合学力テスト、記述方式のものです。

──いわゆる、予備校の駿台とか河合とかっていう模試はやらないのですか。

永谷:3年生は結構受けに行きます。希望者ということで外に。

──そうですよね。

永谷:全体でやれるものって限られていて、外部で会場があるものと、全員が受けさせられるものです。実際には、今、高1、高2、高3は、進研模試を、それにプラスして高3は学校で河合塾の記述模試を1回、公開会場で1回、さらに、受験直前は駿台ベネッセの共催の試験をやっています。

──今後も子供たちについてご指導を、ぜひ、よろしくお願いします。ありがとうございました。